終の住処を探す理由は

 近年高齢者、とりわけひとり暮らしの単身高齢者がマスコミからモテているように思います。単身けんが発足した20年前には考えられなかったこと。

当時はあってはならないことのように取り扱われていましたから。つまり高齢者が、1人暮らしができるほど経済的に自立しているとは思われていませんでしたし、身体的支援のサービスを買おうにも、家政婦さんくらいしかありませんでした。

 

 高齢者が猛スピードで多数派になり、高齢者のみの世帯や高齢者の

単身世帯が普通のこととして認知されるに至って、ビジネスとしての

サービスが台頭してきました。後押ししたのが政府の介護保険等の高

齢者福祉施策です。実にありがたいことです。

 家事サービスや介護サービスも当然急増しましたが、今著しいのが

住居です。老齢期の収入や資産は格差が大きいので、それに見合った

高齢者向け住居が提供されています。これを後押ししているのも政府、

特に建設業界を束ねる国土交通省系の施策「サービス付き高齢者向け

住宅」です。

 かつては高専賃(こうせんちん)と呼ぶことが多かった高齢者専用

賃貸住宅の制度を変え、名称も変えて、国土交通省・厚生労働省の共

管制度として2012年4月から開始。建設にあたって補助金等、各種支

援制度が公的にあるため、建設業・介護事業・人材派遣業・外食業など

多くの業界からの参入が相次いでおり、サービス内容もいろいろ、利用

料金もいろいろ。つまり特色が有り過ぎるため、自分の希望する事項を

はっきりさせてから選ぶことが肝要。

 終の住処になり得ますが、各施設間に共通しているのは見守りサービ

スくらいなもの。実に個性的なので、じっくり見てから決めないと、

終身住むのは無理、ということにもなりかねません。

 

 私の親たちは今住んでいるところで息を引き取るのが当たり前だと思

っていて、高齢になってから終の住処を探すなどということは、頭の隅

にもなかったことでしょう。死ぬまで自己決定を迫られるというのは嬉

しいことですが、辛い事でもあります。終の住処を考えなければならな

いほど命が長くなったことに感謝しつつ・・

  

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