「おひとりさま」の誤解

「おひとりさま」という言葉は定着したと言っていいのではない

でしょうか。ビジネスの話しかしない男性たちでさえ、「おひとり

さま」っていいよなー、と口にします。どうやら経済的に自立した、

定職を持つ、いわゆるバリバリのキャリア独身女性のことを言って

いるようで、うらやましそうに聞こえました。

 

ところがシニアの男性に言わせると、若いときはいいかもしれない

けど、年取ったらどうするつもりかねぇ、とやや批判的になってきます。

 

単身けんの会員の中での捉え方は、どうせ「おひとりさま」なんだから

自分でするしかないのよ、などと自助自立の意志と少し自嘲を込めて言う

人と、「おひとりさま」って単身者をバカにした言い方だと思わない? 

と機嫌の悪い人等がいらっしゃいます。

 

 先日、日経新聞の解説欄で、東工大のU准教授が父親論を展開する中で、

『「おひとりさま」で生きられることが人生の目標なのではなく、他者に

依存し依存されることもできるような、相互扶助の関係の築ける子供を

育てていくことが大切なのだ』、と書いておられました。

 

私は大いに違和感を覚えました。この場合の「おひとりさま」はどの

ような意味合いでおっしゃっていられるのか。対の表現として「他者に

依存し依存されることもできるような、相互扶助の関係の築ける子供」

と言っておられることから、「おひとりさま」は誰からの支援も受けず、

自力だけで生きている孤立した人、と捉えておられるのかと拝察するの

ですが、間違っているでしょうか。

 

単身けんの事務局を20年以上お引き受けしている私から言わせれば、

「おひとりさま」で生きられるということは、情報収集をし、自分の

ーズと照合し選択し、依頼して対価を払い、平等な関係で生きていくこと。

依存し依存される過去の日本的といわれている関係は、立場の弱いほうの

人に荷物が重くなる、特に精神的な負担が掛かりやすくなる傾向が強く、

平等な関係とは思えない事例が多かったと思います。

 

親兄弟・血縁、あるいは近隣という地縁などの関係による押し付けでなく、

平等な立場で他者を支え支えあうという関係でなければ生き生きとした

人生にならないのではないでしょうか。

依存し依存される関係と、支え支えあう関係との違いを考えて欲しいと

思います。

 

私の行き着いた自立とは、「幼いときの自立とはできないことを一つずつ

できるように学習すること、老齢期の自立とは、できなくなっていくことを

一つずつ他者に委ねていくこと」です。

 

「おひとりさま」が流行語になり、普通に使われるようになった今ですが、

「おひとりさま」を理解してからお使いいただきたいと思います。

 

                            (石川由紀)

 

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