No.422◆「家族の絆」と自身の「生活権」

 

◇事務局・石川由紀が折々を綴っています。◇ 

 

コロナ禍は3年も続いています。生活の基盤である収入が不安定になり、“子どもの貧困”“高齢者の貧困”“シングルマザーの貧困”等、生活苦のニュースも増えています。そのような中、成人としての生き方を再度考えさせられる記事に「う~ん」と言ってしまいしました。高齢の生活保護受給者が県を相手に「生活保護廃止処分の取り消しを求める訴訟」を地裁に起こした、という記事です。そしてその判決結果は、原告の勝訴! 10月3日地裁は「世帯の自立という長期的な視点に欠け、違法」とし、「処分取り消しを命じる」判決を下しました。

 

私が考え込んだのは「生活保護廃止処分」の理由です。

 

この家族は高齢祖父母と孫が同居する3人。「生活保護受給世帯」でしたが、孫が准看護科(2年制)に通学するにあたり、福祉事務所は孫の就学が続けられるよう「世帯分離」をして祖父母の世帯の生活保護から孫を引き離していました。お孫さんはめでたく准看護師になり、続けて働きながら「正看護師」を目指して「看護学校」に通っていました。が、孫の「准看護師の収入増」を理由に生活保護を打ち切られ、生計が立ち行かなくなり、祖父が「生活保護廃止処分の取り消しを求める訴訟」を起こしたというのでした。孫は休学を余儀なくされたといい、精神的にも打撃を受け、休学が続いているとか。

 

この関連をweb検索して初めて知ったのですが、生活保護世帯の子どもの学業保証は“高校まで”が通例なんですね。それでもこの例では、お孫さんはバイトをして、准看護科(2年制)の学業と祖父母との生活を支えていました。福祉事務所も孫が就学して資格取得をし、最終的に自立するという長期的目標を立てているので、就学が続けられるよう「世帯分離」をして孫を生活保護から引き離したりしていました。しかし准看護師になり、収入が増えたのだから「世帯分離」を解除し、生活費に入れよ、と職員複数人で家に押しかけてまで迫ったそうです。

 

准看護師から正看護師へ、自立への実現のために働きながら学び頑張ってきた日々、その日まで待つことができない法律があったのでしょうか。10月17日、県は判決を不服として高裁に控訴しました。

 

常々その職にある人たちからは「収入減で苦しくなったらまずは福祉事務所へ行くように言ってくださいね」と私は言われています。金銭受給だけでなく自立に向けての施策提案もあるそうです。福祉事務所から血縁に援助の可否の問い合わせが行くのを嫌って躊躇する人が多いようですが、上記のような例は最近聞いたことがないのでびっくりしています。